銘の真偽鑑定のために

はじめに

1.正真銘と偽銘の判別は、刀剣のどこを見て、また何を基準に行えば良いのでしょうか?

 イ)(なかご)のサビの落付き(サビの色合)

 ロ)銘のタガネの勢い

 ハ)茎のかたち、ヤスリ目、タガネ運びの手ぐせ

 ニ)その他(刀身全体の出来など)


2.本来刀剣を拝見する時は、姿・地金・刃文などを見て刀工の時代・国・伝法などを推測し、その後に柄を外して茎を見 

 るという順番になります。 茎はサビの落付きと、銘文のタガネの勢いを見ます。


偽銘刀の種類と判別法

1.別の刀に後で銘を入れたもの(後銘)

 イ)古い刀の銘をすり消し、後で銘を入れたもの

      

 茎のサビ色・重ね・鎬筋、以上の3点が重要ポイント。ほかに、刀身の重ねに対し茎の重ねが薄くなっていないかどうか確認することも大切です。なぜなら一部の例外を除き、必ず刀身よりも茎の重ねの方が厚い(あるいは研ぎ減りがなければ同じ程度)ものですので、反対の場合は注意しなくてはなりません。また鎬筋(線)が茎の先までまっすぐ通っているかどうかでも判別がつきます。


ロ)古い無銘の刀に、後で銘を入れたもの

      ↓

 サビ色が決め手の一つになります。茎の銘の中のサビを見ること、次に銘のタガネの勢いと癖、出来具合などが問題となります。ただし古い偽名については別です。


ハ)古い刀を磨り上げて銘を入れたもの

      ↓

 サビ色に加えて、姿と刃区の部分を見れば判別が可能で、初心茎であれば刃区のあたりより刃文が始まります。茎の真中まで焼きが入っているようなら、磨上物ということになります。


偽銘新旧

1.古い偽銘は茎のサビ色が落付いて見分けにくいですが、昔は現今のように銘振りの参考資料が多くはありませんでした 

 ので、切ったところでどうしてもそのような偽銘は本物と全く異なるものになってしまいます。しかし例外的に実によく 

 切った偽銘もありますので、このような場合は総合的に判断するしかありません。


2.新しい偽銘は容易に見分けやすいのですが、その要素はサビ色です。茎全体のサビ色と、切銘の底のサビ色を比較して

 みれば一目瞭然で、5倍程度のルーペでほぼ判然とします。タガネの運び、勢いという意味も同時にわかります。

偽銘を見分ける上で、この方法が最もわかりやすいかと存じます。


現代刀あるいは昭和刀に古い銘を切ったもの

 昭和刀は3~4本見れば見分けがつきますが、現代刀は一見すると新刀のように見えるものもありますので注意が肝要です。ただ茎のサビ色を詳細に観察すればわかるものが多いです。


仕入れ物

 これは俗に土産品といわれるもので、脇差に限り、茎の重ね薄い1尺5~6寸までのもので、例えば祐定など有名刀工の銘を入れたものも多くあります。

 一般に末古刀のように見えるものもありますが、よく見ると鍛えは粗く刃も冴えません。特に重ねの薄い脇差は買い控えたほうが良いでしょう。


継ぎ茎と折り返し茎

 継ぎ茎は、最近では電気溶接などで非常に精巧にできますのでなかなか見分けのつきにくいものもあります。拝見する際、金具も取って見るという基本的な作業を忘れなければある程度は防げます。

 茎を継ぐ位置は大体ハバキの下ですから、まずはその辺りのサビ色に変化がないかどうか、茎の先方より縦にして横にして刀身を透かして見ます。凹凸がないかどうか注意しましょう。また電気溶接の場合、高温処理のために沸がブツブツと小さな点状に穴が開いたように見え、これも判別の基準になります。

 ほかに茎の長さにも注目する必要があり、刀身に比較して茎の長さがバランスを保っているかどうか、銘から刃区までの距離が尋常かどうか、銘鑑などを参考にして見ると良いでしょう。

折り返し茎ですが、これは区を送った際に銘の部分を残し、折り返して生かすものです。そのため折り返し部である茎尻に継ぎ目のあるものは、まず駄目と考えて良いと思います。